川口由一さんの紹介

 1939年、奈良県桜井市にて農家の長男として生まれる。小学6年の時に父親を亡くし、中学卒業と同時に専業農家となる。化学肥料、農薬、機械を用いる農業になじまず、心身共に疲労するなかで、生命を損ね、環境を汚染し、資源を浪費する農業の誤りに気付き、38歳の時に、「耕さず、草や虫を敵とせず、農薬、肥料を用いない」自然農を始める。試行錯誤を繰り返すなか、いのちの営みに添う自然農の栽培技術とその理を確立する。

 

 『妙なる畑に立ちて』の出版をきっかけに、田畑の見学や教えを求める人が訪れるようになり、自宅での見学会、一泊二日の合宿会を始める。1991年、実践を通した学びの場を作ってほしいという声に応じて「赤目自然農塾」を開き、同年、「妙なる畑の会・全国実践者の集い」を始める。

 翌年には福岡の学びの場ができ、その後、全国各地にも足を運び指導するようになる。記録映画『自然農 川口由一の世界』の上映や書籍の出版などにより、自然農が全国に広がり、実践する人が増えていくなか、学びの場も各地で生まれている。

 

 2014年、発足以来、23年間に渡り指導者として役割を果たしてきた「赤目自然農塾」の代表を中村康博氏と副代表を小倉裕史氏に引き継ぎ、相談役となる。

 「妙なる畑の会・全国実践者の集い」の代表も次の世代に引き継ぐ。

 

 2022年11月を最後に「見学会」を終了し、執筆に専念する。

 2023年3月まで、心平和に美しく豊かに生きてゆく人としての正しい道を見い出し、その真の答えを生きることのできる人に育つための学びの場として「乾坤塾」、自然農と同時に取り組んできた『傷寒論』『金匱要略』を源とした古方の漢方医学を学ぶ場として「奈良漢方学習会」を開き、病からの自立、人生の自立に向かう人たちの求めに応じ指導する。

 

 2023年6月9日永眠。

 

 

 

〈乾坤塾について〉

 

たくさんの方が参加を希望してくださっておりましたが、第15回をもって乾坤塾を閉塾とさせていただきます。

 

自然農を超えて、人生にかかすことのできない宇宙自然界、教育、医療、芸術、宗教、政治経済といった様々な分野に視野を広げ、認識を確かにして答えを生き、人として総合的に育ち、喜びの人生となるように…豊かな人生展開となるように…

 

川口さんはそのように願いながら、乾坤塾を続けてこられました。

 

閉塾となりますが、それぞれの方が、それぞれの場所でそのような思いを繋げてくだされば幸いです。

 

みなさまが美しく豊かな人生を歩んでいかれますことをお祈りしております。

 

 

〈奈良漢方学習会について〉

 

「僕が勉強を始めた時に、たった一人で書物に向き合い、ひたすら学んだように、今後は一人一人がそれぞれの場で、誰にも依存せずに一人になりきって学んでほしい。

 

 それが本来の学び方だと思う。

 

 そして、今年出版する『傷寒論を読む』が、みなさんの学びを誘(いざな)い深めていくものになればうれしい。」

 

 という川口さんのご遺志どおり、奈良漢方学習会を閉会とさせて頂きます。

 

川口さんから教えて頂いたことをそれぞれ方の中で大切に育んでいかれますことを深く深く祈っております。

 

<著書>

  • 『妙なる畑に立ちて』野草社、1990年
  • 『自然農から農を超えて』カタツムリ社、1999年
  • 『自然農—川口由一の世界』(鳥山敏子氏との共著)晩成書房、2000年
  • 『子どもの未来と自然農』(鳥山敏子氏との共著)フィオーナ、2001年
  • 『自然農への道』(編著)創森社、2005年
  • 『自然農という生き方』(辻信一氏との共著)大月書店、2011年
  • 『自然農にいのち宿りて』 創森社、2014年
  • 『自然農と漢方と―いのちに添って』言視舎、2023年
  • 『傷寒論を読む』言視舎、2023年 ほか。

<監修>

  • 『自然農・栽培の手引き』南方新社、2007年
  • 『自然農の野菜づくり』創森社、2010年
  • 『自然農の果物づくり』創森社、2012年
  • 『自然農の米づくり』創森社、2013年
  • 『はじめての自然農で野菜づくり』学研プラス、2013年
  • 『自然農を生きる』創森社、2020年
  • 『完全版 川口由一 自然農』ワン・パブリッシング、2021年
  • 『自然農ではじめる野菜づくり』ブティック・ムック、2023年 ほか。

<映像作品>

  • 記録映画『自然農 川口由一の世界』(グループ現代+フィオーナ)
  • DVD『川口由一の自然農というしあわせ with 辻信一』(ゆっくり堂) ほか。